原価は上がっているのに、価格の話が営業から上がってこない

「仕入れ値が上がっているのは分かっています。でも、取引先に言い出せなくて」

価格転嫁の話になると、経営者の方との会話で、こういう言葉を聞くことがあります。

材料費も、外注費も、人件費も上がっています。数字の上では、価格に反映する必要があることを、社内の誰もが分かっています。

それでも交渉が始まらない会社があります。取引先との関係が難しいから、だけではありません。

交渉が止まる場所は、社内に3つある

価格転嫁の交渉が始まらない会社を見ると、止まっている場所はたいてい次の3つのどこかです。

- 何がどれだけ上がったのかを、営業が数字で説明できない
- どこまでなら応じてよいかを、誰も決めていない
- 断られたときに、誰が相手と話すのかが決まっていない

1つ目は、原価の上がり幅が経理や現場にあって、営業の手元にないケースです。営業は「上がっています」としか言えず、相手に「どれくらい?」と聞き返されて止まります。

2つ目は、営業が自分の判断で応じるしかない形です。社長に確認する時間がないので、言い出すこと自体を避けるようになります。

3つ目は、断られた経験が個人の記憶に残るだけで、次の人に引き継がれません。同じ取引先で、同じ場所で、何度も止まります。

どれも取引先の問題ではありません。社内で、見えているものと決め事がそろっていない問題です。

「いくら上げるか」の前に、決めておくこと

価格転嫁というと、上げ幅の計算に目が向きます。けれど先に決めたいのは、次の3つです。

- 上がったのは何か(材料、外注、人件費のどれが、どれだけか)
- 取引先ごとに、どこまで伝えるか(全社一律か、取引先ごとか)
- 断られたら、誰が、何を持って、もう一度話すか

上げ幅は、この3つが決まれば計算できます。逆に、3つが決まっていないまま上げ幅だけ決めても、現場では使われません。

今日できる確認:売上の大きい3社で、3行ずつ書く

売上の大きい取引先を3社選び、それぞれ次の3行を書いてみてください。

- 1行目:この取引先向けの商品で、ここ1年で上がった原価は何か
- 2行目:その上がり分のうち、今の価格のままで会社が負担している額はいくらか
- 3行目:価格の相談をするとしたら、誰が、いつ、相手の誰に話すか

3社とも3行が書けるなら、交渉に入る準備は整っています。

1行目が書けないなら、原価を営業が見える形にするところからです。2行目が書けないなら、負担している額を、まず数えるところからです。3行目が書けないなら、役割を決めるところからです。

3社で同じ行が詰まるなら、取引先ごとの事情ではなく、会社の進め方の問題です。

交渉の前に、営業の言い方をそろえる

価格の話は、営業の担当者ごとに言い方が違うと、相手に伝わりません。同じ会社なのに、人によって「上がります」「検討中です」「お願いベースです」とばらばらだと、相手は一番弱い言い方に合わせて受け取ります。

そろえるのは、細かい台本ではありません。次の3つです。

- 何が、いつから、どれだけ上がったか
- 相談したいのは、いつまでの、何についてか
- 返事をもらう期限

この3つを、営業の全員が同じ言い方で言える状態にします。

なお、取引条件や下請取引に関する法令上の判断は、弁護士や行政書士、関係機関の窓口など専門家の領域です。HITOTASUが一緒に見るのは、その手前にある、原価の見え方と、営業の言い方と、断られたあとの役割です。

名古屋・愛知の中小企業が、価格の話で止まらないために

付き合いの長い取引先が多い会社ほど、価格の話は切り出しにくくなります。切り出しにくさを気持ちの問題で片づけず、決め事の問題として、ひとつずつ置き換えていくのが近道です。

HITOTASUは名古屋を拠点に、中小企業の営業の仕組みづくりと、現場に定着するところまでの伴走を行っています。3行が書けたあと、営業の言い方をそろえて動かすところまで、一緒に進めることもできます。

原価が上がった分を、いま誰が説明できますか。その説明は、営業の全員が同じ言い方でできますか。