会議で誰も反対しなかった方針が、半年後に形だけ残っている

会議で、誰も反対しなかった。経営者にとっては、うれしい出来事に見えます。

けれど、反対が出なかったことは、本当に良い知らせでしょうか。

よくあるケースとして、こんな場面があります。

社長が新しい方針を発表します。幹部会議では「いいと思います」という声ばかりで、反対意見は出ません。

ところが数週間後、現場では「あの方針は、うちの現場には合わない」という話が出ています。その話は、社長の耳には入りません。

半年後、方針は資料に残っているだけです。社長は「現場の動きが遅い」と感じ、現場は「言っても変わらないから」と黙っています。

学んでいても、自分の判断の癖は自分では見えにくい

経営者の成長というと、本を読む、セミナーに出るといった学びが思い浮かびます。学ぶことには意味があります。

ただ、学びだけでは足りない部分があります。自分の判断の癖です。

どんな場面で決めるのが早いのか。どんな場面で人の話を聞かなくなるのか。これは、自分では気づきにくいものです。

気づくには、外から見た情報が必要です。ところが社長の立場にいると、その情報が入りにくくなります。

さらに、成果を出してきた経営者ほど、これまでのやり方への自信があります。その自信は強みですが、違う意見を「現場の理解不足」と受け取ってしまう原因にもなります。

反対が出ないのは、賛成ではなく「言っても変わらない」のかもしれない

会議で反対が出ないことは、全員が賛成していることを意味しません。

社員の側には、それぞれの事情があります。社長が決めたことには異を唱えにくい。前に意見を言ったときに、受け止めてもらえなかった。黙って従うほうが楽だ。

社長が機嫌よく話を聞いてくれる日と、そうでない日があります。社員は、その差をよく見ています。話しにくかった日の記憶が、次に話すかどうかを決めます。

本当のことは、社長の立場が上がるほど、社長に届きにくくなります。

これは、社員の姿勢が悪いからでも、社長の人柄に問題があるからでもありません。立場に差があると起きやすい構造です。

社長に届く情報の範囲が、会社の判断の上限になる

届く情報が限られると、判断は社長の経験と記憶の範囲に収まります。

現場で起きていることを知らないまま決めた方針は、現場に合いません。合わない方針は、動きません。

たとえば、担当者しか知らない手間や、お客様から出ている小さな不満。こうした情報は、人づてに上がるうちに形が変わり、社長に届くころには丸くなっています。

動かない結果を見て、社長は「社員の意識が低い」と疑い始めます。実際には、社長に届く情報が足りなかっただけ、ということがあります。

会社の成長が止まる位置は、社長の能力の限界とは限りません。社長に届く情報の範囲で決まることがあります。

年に一度、幹部3人に「社長に変えてほしいこと」を紙で聞く

今日できる確認です。

1. 幹部または古参の社員を3人選ぶ

2. 次の質問を紙に書いて渡し、後日、1人で読む
3. 返ってきた答えを見比べる

質問は、これだけです。

「この1年で、私の判断のせいで現場が動きにくくなった場面はありますか」

見比べるときは、次の3点を見ます。

- 3人の答えに重なる場面はあるか
- 「そんなことがあったのか」と社長が驚いた場面はないか
- 「実は言えなかった」という言葉が書かれていないか

聞くときに守ることは1つです。その場で反論しないこと。弁解を始めると、次から本当のことは返ってこなくなります。

答えが重なる場面があれば、それが次に変える1つです。全部を直そうとしなくて構いません。

変えると決めた1つは、聞いた3人に伝えます。「あなたの指摘で、これを変える」と返すことで、翌年も声が届きやすくなります。

聞き方は会社ごとに違う。聞いたあとに、実際に変わるところまで一緒に見る

誰に、どんな形で聞くとよいかは、会社の規模や関係性によって違います。社長が直接聞くと、本音が出にくい会社もあります。

HITOTASUが一緒に見るのは、社長に届く声の通り道をつくり、聞いた内容を判断や運用に反映する部分です。自社だけで進めにくいときは、第三者として聞き取りを担う方法もあります。聞くだけで終わらず、現場で変化が見え、成果につながるところまで進めることもできます。

直近1年で、社員から「それは違うと思います」と言われたのは、いつが最後でしょうか。