決めたとおりに始めたのに、3か月で止まる
月曜の朝、担当者から短いメッセージが届きます。
「今週の投稿、何を書けばいいですか」
半年前、会社としてSNSを始めることを決めました。担当は若手1人、週1回の更新、ネタは各部署から集める。ここまで決めて始めています。
最初の1か月は回りました。
3か月目には、投稿の間隔が2週間に伸びています。
決めたことは守られているのに、続いていません。
よくあるケースとして、こんな場面があります。
経営者は「まず知ってもらうことから」と考えています。
担当者は毎週、各部署に投稿ネタを聞きに回ります。返ってくるのは「特にないです」。仕方なく、現場写真に一言を添えて投稿します。
月末に経営者へ報告するのは、フォロワー数と投稿本数です。
「増えてるね」で会話は終わります。
次の週も、担当者は同じ質問を持って社内を回ります。誰に何を届けたいのかは、まだ誰も決めていません。
「何を書けばいいですか」は、ネタの相談ではなく、決まっていないことの報告です。
止まる理由は、ネタ切れではなく判定できないこと
更新が止まった理由を聞くと、たいていネタ切れと忙しさが挙がります。
どちらも事実です。ただ、それは止まった直前の状態で、止まる方向へ進み始めた原因とは別です。
発信が続く会社と止まる会社の差は、1本ごとに良し悪しを判定できるかどうかに出ます。
判定できれば、次の1本を前より良くできます。書く側に手応えが残ります。
判定できなければ、毎回ゼロから考えることになります。フォロワー数は増えても、自分の投稿が良かったのかは分かりません。
この状態が3か月続くと、担当者の中で発信は作業になります。
そして忙しい週に、最初に外されます。
決めていないのは「誰に・何を・なぜ」の3つ
判定できない会社が決めていないのは、次の3つです。
- 誰に:どういう立場の人が、どんな場面で読むのか
- 何を:その人が知らない、または誤解していることは何か
- なぜ:読んだあと、次に何が起きてほしいのか
多くの会社は、この3つより先に、担当・頻度・ネタの集め方を決めています。
決めやすいからです。担当も頻度も、決めた瞬間に守れているかが分かります。
一方で「誰に・何を・なぜ」は、決めても翌日の行動が変わりません。だから後回しになります。
ただ、担当者が毎週迷うのは、この3つがないときだけです。
3つが決まっていれば、「今週はこの相手のこの誤解を解く」と決められます。ネタは探すものではなく、選ぶものになります。
放置すると、発信そのものが社内で否定される
3つを決めないまま続けると、起きることは3段階です。
まず、投稿の内容が毎回ぶれます。採用向けの話と顧客向けの話が同じアカウントに並び、どちらの読者にも中途半端になります。
次に、報告がフォロワー数と本数だけになります。増えたことは言えますが、増えて何が良かったのかは言えません。
最後に、会議で「で、これは意味があるのか」と聞かれ、担当者が答えられません。
このとき否定されるのは、目的の設定ではなく発信そのものです。
半年分の投稿が残っていても、社内では「やってみたが効果がなかった」という記録になります。
目的を決めずに始めた発信は、やめる理由だけが毎月たまっていきます。
先に決めるのは「読んだあと、次に何が起きてほしいか」
3つのうち、先に決めるのは「なぜ」です。
なぜが決まると、誰にと何をが絞れるからです。
読んだあと、次に何が起きてほしいのか。ここには、たとえばこういう答えがあります。
- 困ったときに、相談先として社名を思い出してほしい
- 商談の前に読んで、進め方の前提をそろえておいてほしい
- 求人を見る前に、働き方を理解しておいてほしい
3つとも正しい目的です。ただ、どれを選ぶかで、書く相手も内容も変わります。
「認知を上げる」は目的になりません。認知が上がった状態を誰も説明できないため、判定もできません。
そして、これを決めるのは経営者です。担当者は、自社が誰に選ばれたいのかを決める立場にありません。
ここを担当者に預けているうちは、毎週「何を書けばいいですか」が届きます。
決めた1行を判断基準にして、今日3本で試す
決めた「なぜ」は、1行で書いて残します。
置き場所は、投稿を作る人が毎回見るところにします。投稿予定表の先頭行でも構いません。
そのうえで、出す前に1つだけ確認します。この投稿は、その1行に近づいているか。
近づいていないなら、内容が悪いのではなく、宛先が違います。
営業担当や採用担当が別にいる場合は、その1行を同じように説明できるかを見ます。ここがそろっていないと、媒体ごとに違う会社に見えます。
今日できることが1つあります。
直近に投稿した3本を並べてください。
そして1本ずつ、「これを読んだ人に、次に何をしてほしかったか」を1行で書いてみます。
3本すべて書けるなら、発信の目的は社内で共有されています。
1本でも書けないなら、その投稿は宛先が決まらないまま出ています。
3本とも同じ答えになるなら、それが今の発信の目的です。その1行を、次の投稿の判断基準にできます。
誰に、何を、なぜ発信するのか。この3つは、顧客の入り方や採用の状況によって会社ごとに変わります。社内だけで決めると、言いたいことの並べ替えで終わりがちです。
自社の発信の目的を一度外から整理したいときは、一緒に言葉にする方法もあります。
直近の投稿1本を、誰に向けて書いたか、いま言えますか。
