# うまくいっているとき、社長の判断は一番間違えている

ある経営者から、こんな相談を受けた。

「去年まで順調だったのに、今年に入って急に受注が落ちてきた。でも振り返ってみると、去年の春に自分が下した判断が今になって効いてきている気がする」

売上が好調だった時期に、どこか強気の判断をした。その結果が半年〜1年後に出てくる。こういうケースは、中小企業の経営相談でよく見られる。

では、なぜ「うまくいっているとき」に判断を誤りやすいのか。

## 判断を歪める3つの原因

経営者の判断を狂わせる要因は、大きく3つある。

**1. 感情(成功体験への慢心)**

前回うまくいったから、今回も同じ判断で大丈夫だろう。この思考は、経営者が気づかないうちに判断の中に入り込んでくる。

「あのやり方で乗り越えてきたんだから」という自信は、大切な直感でもある。しかし市場や顧客の状況は変わる。前提が変わっているのに判断軸が変わっていないとき、ズレが生じる。

**2. 思い込み(自分の見たいものしか見ない)**

「この事業はうまくいくはずだ」と信じているとき、人は反対意見を無意識に弾く。

社内から「それは難しいのではないか」という声が上がっても、どこかで「わかってない」と思ってしまう。経営者が確信を持っているとき、組織の中に反論は生まれにくい。結果として、意思決定の前に必要な情報が集まらない。

**3. 情報不足(「現場を信じる」の落とし穴)**

中小企業では、経営者自身が判断するための情報収集を誰かに委ねていることが多い。営業の感覚、担当者の報告、会議での数字。それらが「事実」だと思って判断しているが、そこにはすでにフィルターがかかっている。

現場が「これは社長に言わなくていいだろう」と判断した情報は、社長の耳に届かない。

## 放置すると何が起きるか

判断の質が低いまま放置されると、組織に「社長の気分次第」という空気が広がる。

予算の使い方が一貫しない。方針が変わりやすい。社員が「どうせ言っても変わらない」と思い始める。会議で数字より感覚が優先される。

これが続くと、まともな人材から先に判断の場から引いていく。「この会社の意思決定には関われない」という感覚が、離職の原因になることもある。

経営者の判断の質は、採用や仕組みより先に、組織の空気に影響を与える。

## 今日からできること

**① 判断の前に「なぜそう思うか」を声に出す**

「この方向でいく」と決める前に、自分の判断の根拠を一度言葉にしてみる。感情や思い込みからきているのか、事実からきているのかが、少しだけ明確になる。

**② 直近3つの判断を振り返る**

「あのとき、なぜそう判断したか」を時間をおいてから見直す。当時の感情や状況が、判断にどう影響していたかが客観的に見えてくることがある。

**③ 反論を「引き出す」質問を持つ**

会議や面談で「この判断に何か問題はあるか?」と問いかける癖をつける。「はい」しか言えない空気の中では意味をなさない。しかし問い続けることで、少しずつ意見が出てくる組織に変わっていく。

## 仕組みとして解決するには

個人の気づきや習慣だけでは、判断の質は上がりにくい。

根本的な解決には、意思決定のプロセス自体を見直す必要がある。たとえば、大きな投資や方向転換を行うときは「決断する前に外部の視点を入れる」というルールを設ける。社内の人間だけで議論していると、どうしても空気が同質化していく。

判断の質が高い経営者ほど、「自分が間違っているかもしれない」という前提で情報を集める。これは謙虚さではなく、経営スキルの一つだと思う。

## まとめ

判断を誤ることは、経営者の「性格の問題」ではない。

感情が入りやすい構造、思い込みが生まれやすい環境、情報が正確に届かない仕組み。この3つが重なると、どんな優秀な経営者でも判断を歪める。

うまくいっているときこそ、「今の自分の判断に、バイアスは入っていないか」と問う習慣を持つことが、次の停滞を防ぐ。

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経営者の判断の質は、会社の成長スピードに直接影響する。制度や採用よりも、実は先に手をつけるべきテーマだとヒトタスは考えている。

もし「最近の判断が本当に正しいのか確認したい」「意思決定のプロセスを整理したい」と感じているなら、まず現状を整理してみることをおすすめする。

会社ごとに状況は異なる。同じ課題があっても、解決策の形は違う。一度、外から見てもらう機会を作ってみてほしい。

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